ホテルの空間について

ずっと空間の広い職場で仕事をして来た。と言ってもお恥ずかしい話、自分のオフィスが広い訳ではなく。あくまでもゲストの導線である空間が広いという意味である。この空間という事について、いくつかの角度から見ていきたいと思います。空間は想像以上に私たちに大きな影響を与えています。ゆったりとしたラグジュアリーホテルに行くと気分が落ち着いて、歩幅もゆったり大きくなったりしますよね。今回は空間があるということはどういうことなのかについてホテリエの視点から見ていきます。

アペリティフという空間

ホテルに泊まったり旅をする時、どこに行こう、何を食べようとあれこれ考えを馳せる計画時間から旅のわくわく感は始まる。

ノートに集めていたメモやグーグルした情報をピックアップしてアイテナリーに書き込み、自分だけの旅程を考える時間は誰もが平等に持てる最高の楽しみのひと時である。

何かが始まるまでの空間、目的地に着くまでの楽しみというものがますます人々の心をときめかせてくれている。

「Apéritif(アペリティフ)」とはフランス語で食前酒のことである。フランスでは、お食事前の「アペリティフ」の時間が大好きである。

もともとは食欲を刺激することや、集まっている人たちとの会話のきっかけになることで食前酒を飲むことから始まった言葉である。

この時間は、これから始まるメインコース前の楽しい時間でもある。もちろんたまにはアペリティフだけで、終わりにするもよし!またこれから迎える素敵なディナーの前座とするのも良し!おいしい食事は恋人たちの心を溶かし、様々な合意をスムーズに演出する。

ホテルのバーで待ち合わせ、カクテルタイムでリラックスしたり、クラブラウンジで一杯やってから、ディナーのレストランへと移動する方たちも沢山いる。美しいシャンデリアの輝きを放つ空間の中で、知らない間に料理をワインでほぐす食卓外交や、サイレントランゲージも行われる。

非日常のホテルの空間だからこそ起きるマジックを管理人はそっと見守っている。

何て素敵な空間、時間の使い方なのだろう!

いつもきれいな空間

長い時間を過ごす場所は、できるだけ快適で美しい”気”
の満ちる空間にしたいもの。

その為の動作の一つが掃除である。ハウスキーピングは、ホテルのパブリックエリアと言われるロビーなどの共用部やレストランを夜間に専門的な知識を持った清掃員が掃除を行う。

彼らはデザイナーが世界各国から集めた難しい素材を長い間良い状態にメンテナンスするため、日々勉強を続けている。パワーストーンの磨きから、イタリアの大理石、有名な織物会社が紡いだ絨毯など普段使いでは見たこともない各国の素材から構成されているマテリアルの掃除の仕方に精通しているのである。どうやったら届くのとばかりの高い天井の埃とりから、外壁の清掃までも行う。

一方客室内では、ハウスキーパーが客室の清掃を、細かいところまで毎日丁寧に清掃を行っている。特に客室では、ご夫婦が宿泊する場合には、空間の中に使用場所にテリトリーが出来上がるのが面白い。

わかりやすく言うと、クローゼットの中が、自然と両端に女性と男性に分かれる。また洗面台の上も女性と男性の持ち物で左右に分かれるのである。それは国が違ってもよく見られる傾向である。

ご家族で宿泊される場合は、一部屋の中に、家族の実際の住まいが見て取れる。きれいに使われている方、そのまま散らかっても全く気にされないご家族もいる。優秀なハウスキーパーはその中で、いかに快適に過ごしてもらえるか、清掃をしながら、テリトリーごとに空間を作りあげるという作業を行っている。それ故掃除だけでなく、空間づくりをお手伝いし、いつもきれいな空間で過ごせるように見えない所でハウスキーピングが一役買っているのである。

人生には限りがある、だからこそ物の少ないすっきりした空間で必要なものに囲まれて暮らしたいものである。

空間=人格

”住まい”は人格である。過ごす時間が長い場所の空間のありさまは大切だ。

自分がいる空間の”気”を意識して暮らしていますか?

空間=人格

自分が空間を作り、また自分からも空間に発しているものがあります。部屋の気が汚れている。双方向から作用しあっている。

だから部屋=人格

きれいな部屋で過ごすという事は、”快”に浸ることです。気が滞った空間がなぜ悪いかというと、悪いものを好むからです。気が滞ると空間がどんよりし、湿気でじめじめしているような不快な状態になります。

気を滞らせないためには日頃から掃除は欠かせません。脳が空間の影響を受けその人の意識や行動に大きな影響を与えて、人格にまで影響を与えているからです。

幸せを感じる幅

幸せを感じる幅について、あなたはいつも同じ範囲を選択していませんか?

いつも同じことを繰り返していると、空間がなくなって、凝り固まり息苦しいことになります。

選択肢の多さ=人間の幅これも空間の一つと考えています。

まずは、そうなったらいいなぐらいの気楽な気持ちで楽に楽にイメージする。細かいことを考えすぎるとつい不安材料を探し始めちゃうから、良いイメージ、何か温かいイメージだけでもいいのかもしれません。

人生の波にのまれてしまった時は、目線を上げて。人生は波に揺れる小舟です。上に下に揺れているからどちらかだけという人生はありません。だから範囲を自分で狭めないで大きな空間の幅を常に持っていてほしいもの。

空白の時間

管理人の友人に1年間の予定をみっちりと埋めているプラニングのエクスパートがいました。今日どこか行こうよ!といったその日暮らし的な誘いは絶対お断りであった。残念ながらその友人は、先急ぎ過ぎて、がんで亡くなってしまった。恐らく病気以外のすべての事を計画的に進めて描いた時間を送ってきていたことだと思う。

管理人の様に、ぼーっとしていつも予期せぬ出来事や出会いというものから生まれる何かにあまり合わなかったのではないだろうかと思う。

あれもこれもやりたい現代人にとっては、計画性は本当に大事だ。しかし空白の時間=空間を作る事がいかに大切かという事がコロナ禍の2年間に強く感じたことである。計画をぎゅうぎゅうにして、無駄がなさすぎると気持ちがなえてしまうし、空気の様に柔らかい心持ちに出会うこともないと思うのである。携帯を持っていると何もしない、何も考えないってできるようでなかなかできない。

ちなみに管理人は、また忙しくなっているが、週に2日は予定を入れない日を必ず作るようにしている。

気功と心の空間

気功では、何もしない時間こそが充足の時間である。

気功とは、大宇宙の生命エネルギーを自分の体の小宇宙という空間に集めて取り込む壮大なスケールの健康法である。人は大宇宙のエネルギーによって生かされているという気功の心理に触れることで、自分の存在がより客観的にまた宇宙という空間の中に見られようになり、それまでの悩みが小さなことにも感じられるようになって感情も安定してきます。

気功で、姿勢、呼吸、心を正します。姿勢を正し、呼吸に集中すると体の中の空間の広がりを感じます。体内に広がる空間の呼称です。生命の源を空間そのものとした生命あふれる空間=余白=部屋の空間、呼吸法が一番の精神統一であり、自分の空間を整え、虚空と一体になれるのです。

余白

余白とはなにもない空間という意味ですが、デザインにおいては意図を持ってデザインされたスペースのことを指します。

文字としての定義は曖昧ではありますが「空間をデザインする」という意味で使われる余白のことをホワイトスペースと言います。

管理人は、余白についてこれからもう少し勉強をしていきたいと思っています。余白=空間というところがとてもホテルにとっても大切な要素であり、デザインされたホテルの空間、何もない場所にこそ意味を持たせていると思わせているからです。以前、お客様より、無駄なスペースが多すぎるというご指摘を頂いたのを覚えているのですが、それこそが本当の贅沢なのではないかと感じる今日この頃です。

空間が心に与える影響って大きいんだなあ! 

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